黄瀬戸 −現代陶芸家列伝−


〔黄瀬戸〕−安土桃山時代のほんの十数年間、突然現れ短期間で姿を消したやきもの。
美濃の窯跡から発見された「陶片」を元に、現代の黄瀬戸を追及する中堅〜若手作家の
作品を「お父さんのやきものギャラリー」収集品から紹介します。すべて、私個人の収蔵品
からのご紹介で、著名な「巨匠」「大家」の作品はございません。どうぞ、ご了承ください。






〔1〕  各務周海 (かがみ しゅうかい) 〔2〕  堀 一郎 (ほり いちろう)
2006年 2009年
黄瀬戸の名手、各務周海奥行きを感じさ 穴窯焼成の灰被黄瀬戸、匣鉢(さや)に入れな
せる深い色合いは、他の追随を許さない。 い焼成で、古雅を湛えた独自の味わいが持ち味。






〔3〕 原 憲司 (はら けんじ) 〔4〕 山口真人 (やまぐち まこと)
2006年 2013年
まさに神業、素材・造形・焼成・・・・すべてにこだ 瀬戸・赤津の窯元、西山窯の六代目。志野・織部・
わり、もはや桃山陶の域を超える現代の黄瀬戸。 瀬戸黒等で頭角を現し、精力的に新作発表を展
開中。太田梁さんとは、霞仙陶苑での兄弟弟子。






〔5〕 太田 梁 (おおた りょう)
2012年 2013年
桃山の名品に習いつつ、独自の味わいや品格を追求した黄瀬戸で
颯爽と表舞台に登場した太田さん。作陶へのこだわりは他に類を見
ない。一陶入魂の仕上がりから、作品への強い思いが伝わってくる。






〔6〕 大嶋久興 (おおしま ひさおき) 〔7〕 加藤康景 (かとう やすかげ)
2010年 2009年
さりげない佇まい見せる美濃伝統の黄瀬戸(無地・ 美濃陶祖十四代の系譜を受け継ぎ、研究・
六角)ぐい呑、古窯の地「五斗薪」で、自然体・円熟 研鑽を積んで独自の味わいを見出した作者、
の作陶の中から、多くの優品が生みだされている。 一目見て「陶祖」の作とわかる黄瀬戸である。






〔8〕 米田萬太郎 (よねだ まんたろう) 〔9〕 荒川広一 (あらかわ こういち)
2002年 2011年
師、鈴木五郎の助手を勤めた後独立、志 荒川豊蔵が多治見に開窯した「水月窯」、その三代
野・織部・灰釉に加え、独特の風合いを感 目にあたる作者が伝統の薪窯により焼き上げた、地
じさせる黄瀬戸は他と一線を画している。 味ながら味わい深い景色・佇まいの黄瀬戸である。






〔10〕 富永善輝 (とみなが よしき)
2007年 2009年
美濃伝統の窯元での修行を経て独立後、黄瀬
戸・緑釉でその実力を一気に開花させた作者。
特に黄瀬戸は薄作りで潤いのある発色が秀逸。






〔11〕 樋口雅之 (ひぐち まさゆき) 〔12〕 徳川 浩 (とくがわ ひろし)
2013年 2012年
薪窯焼成での味わい深い志野・瀬戸黒を持ち味とす 釉の流れ、色あいの変化とグラデーション、桃山写と
る作者の、数少ない黄瀬戸。無地・六角で表面は艶 は異なる現代の黄瀬戸を追い求める徳川さん。腰周り
を湛えた「ぐい呑手」、作者の解釈による作品である。 でピタッと止まった釉の溜まりが印象的な秀作である。






〔13〕 林 恭助 (はやし きょうすけ) 〔14〕 山口 正文 (やまぐち まさふみ)
2008年 1997年
今では、美濃陶芸協会をリードする林会長の2008年作 やきものに関心を持ち始めて、初めて巡りあった「黄
の「黄瀬戸」ぐい呑。色濃く艶やかな上がりとなっている。 瀬戸」が、瀬戸・赤津の窯元西山窯五代目、山口正文
さん作(1997年)でした。明るい色合い、胴紐作り、胆
礬(たんぱん)や鉄文のあしらい、私にとってこの茶碗
は「やきもの」の魅力に引き込まれる原点となりました。






〔15〕 西島 隆 (にしじま たかし)
2005年 2010年
唐九郎に師事し、多彩な志野・織部・黄瀬戸・灰釉の
酒器・花器・食器等が持ち味。この香合は、とあるご縁
がきっかけで、特別にお願いして作っていただいた香
合、味わい深い「油揚手」に仕上げていただきました。






〔26〕 各務賢周 (かがみ まさかね)
2007年 2014年
黄瀬戸の名手であった父の元で作陶に打ち込 2014年の締めくくりに、最高の焼き味と言える
みつつ、土も釉も父と異なる素材を用い独自の 賢周さんの黄瀬戸に出会った。造形・色合い・タ
作品にこだわってきた作者の、色合い・焼け・焦 ンパン・焦げ、どれもこれまでにない完成度。父か
げともに野趣に富んだ優品。本人曰く「これが窯 ら黄瀬戸の技を受け継いで、見事な復活である。
から出てきた時のことは今でも覚えています。」






〔17〕 加藤博一 (かとう ひろかず) 〔18〕 鈴木伸治 (すずき しんじ)
2003年 2013年
艶消しで落ち着いた薄黄色に胆礬(たんぱん)の 紫志野・志野・織部、若い感性で大胆な作行が
緑が僅かに施され、器全体に枯淡の趣を湛える 持ち味。初作から試行錯誤を重ね個展の度に進化
職人技の黄瀬戸。備長炭の貴重な灰の不純物を を遂げる黄瀬戸、今後が楽しみな作家さんである。
丹念に取り除き、作者独特の釉調を出している。






〔19〕 鈴木 都 (すずき しゅう)
2014年 2014年
 今年、満30才。13才の頃から美濃古窯跡を巡り、2011年に土岐の地で本
格的に作陶をスタートさせた作者。土・灰・焼成の試行錯誤を繰り返し、自らの
イメージする黄瀬戸・志野を目指す。計り知れない可能性を秘めた新星である。






〔20〕 加藤亮太郎 (かとう りょうたろう) 〔21〕 松原一哲 (まつばら かずのり)
2011年 2014年
美濃伝統の幸兵衛窯、次代を担う俊英 淡い発色の薄手の器体、印花文に胆礬(たんぱん)
の黄瀬戸は、独特の発色・風合いである。 と鉄釉のさりげない装飾。桃山陶の黄瀬戸は、このよ
うな感じで職人の手により作られていたのではないか
と思わせる一点。入手したてのアップとなりました。






〔22〕 中村祐佐 (なかむら ゆうすけ) 〔23〕 後藤秀樹 (ごとう ひでき)
2010年 2014年
大型の壺からぐい呑の小品まで、色合い、光 美濃の伝統の古窯の地で、土や釉薬の素材の
沢、焦げ具合など窯焚きの度に工夫を加え、一 味わいを引き出す志野・黄瀬戸に精進する作者。
点ずつ手塩にかけて焼き上げる作者の黄瀬戸 渋く控えめな色合い、腰周りに出た焦げ、鮮やか
は、奇をてらわない素朴な味わいを湛えている。 な胆礬(たんぱん)迷わず手にした一品である。






〔24〕 山田洋樹 (やまだ ひろき) 〔25〕 鈴木 健 (すずき たけし)
2014年 2011年
美濃陶祖十四代の作に心酔し、やきもの 陶芸の家系を受け継ぎ、燃え上がるような緋色が印象的
作りの世界に飛び込んだ作者。初々しさを な志野で注目を浴びる作者の、数少ない黄瀬戸盃。後に
湛えた初作の黄瀬戸、記念の一点である。 も先にもこの一点以外、まだお目に掛かったことがない。






〔26〕 関 守高 (せき もりたか)
2005年 2014年
キレの良い造形、独自の釉調、自らの創作 関さんの最初の黄瀬戸(右/2005年)
の道を一歩一歩進む作者との、出会いの作 から9年、釉調も造形も焼味も一段と深味と趣
品の一つ。今から9年前の黄瀬戸である。 を増した会心作。たゆまぬ精進が伺われる。






〔27〕 桜井裕介 (さくらい ゆうすけ) 〔28〕 岸野 寛 (きしの かん)
2003年 2014年
今から11年前の2003年、四日市での初個展で 焼〆、白磁、粉引、志野、織部・・・全て薪窯焼成に
巡りあい、その後2005年まで計4回個展を開催。 よるフルラインナップの新作展で見かけた黄瀬戸。
当時、若干23歳にして、驚くべき質感の瀬戸黒・ 薪窯でこの質感・色合いが安定的に出せる作り手
志野・唐津・黄瀬戸を次々と発表し、颯と活動を停 はざらにはいない。ご本人曰く「掴みました」。
止した作者。年月を経ても作品は息づいている。






〔29〕 田中 孝 (たなか たかし)
2011年 2012年
炎芸術2011年秋号で、黄瀬戸の注目作家として掲載された田中さん
以降の活躍は目覚しい。黒い胎土に独自の黄瀬戸釉を施し艶を抑え
た黄褐色に仕上げた朽葉釉。見慣れた黄瀬戸とは一味違った斬新さ
が注目を浴びる。今年も、数々入選・入賞を果たし大活躍中である。






〔30〕 有本空玄 (ありもと くうげん) 〔31〕 深見文紀 (ふかみ ふみのり)
2015年 2015年
志野の名手、有本さんが手掛けた「黄瀬戸」である。 古陶や先人に学び、土・釉薬・焼成に幾度となく試行
うかがえば、釉薬は灰汁抜きした土佐備長炭を用い、 錯誤を重ね、納得いくまで挑戦した深見さん。見事な
志野と一緒に幾日も焼成されるため、焦げや釉溜な 色合いと品格のある佇まいの黄瀬戸を発表した。
ど変化に富み、見込や外周には灰釉のような表情も 取ればその労が伝わるような質感・風合いを感
現れる。共箱の中の栞には「一生一品」の言葉が添 じる。黄瀬戸の作り手として、颯爽と名乗りを上げた。
えられ、やきものに打ち込む気概が伝わってきます。