DOUBLE+CROSS THE 2nd EDITION リプレイ

原初の光(後編)


2005/1/30
ゲームマスター:Ascalon
プレイヤー:ハーミット/桜井 蒼樹/だいち(敬称略)


■エンディングフェイズ■
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■エンディングフェイズ 【戦い終わって】
 村瀬 尚 場所:久路洲市支部・支部長室 時刻:事件解決の次の日 登場:不可
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GM:さて、事件が終わった次の日
GM:貴女は今回の事件の詳細について、支部長さんに報告したのでした
:「というわーけで。とっつかまえるのできなかたでスよ」
OZ:「いやいや、相手の企みを潰せただけでも御の字だよ」
GM:と語るのは、金属製の像だ


「んー。司聖君には悪いことしましたねえ」
某考え○人、なポーズで支部長席に座っている、金属製の像。
「白鷺兄妹には今回の件、伝えておくよ。どんな事であれ、自分たちは知りたいと……そう言っていたからね」
口調からして自嘲気味に笑みを浮かべている。器用だ。
「……本当にFHに寝返り、悪事に手を染めていたとなれば……ショックも大きいだろうけどね」
 金属像の分際で器用にも重たげな溜息をついた。
「そでスねえ」
適当に相槌を打って、尚は思い出したように声をかけた。
「ところで…支部ちょー」
「何かな?」
「王水ってご存知でスか?」
ビクンっ、と金属像が震える。実に小器用だ。そして『王水』が何かを知っている。
「……あー、尚くん。私は金属像であるからして……その、歩いて逃げ出すこともできないんだよ?」
おそるおそる金属像が尚を見やる。
「普通体積比で濃塩酸3と濃硝酸1とにしてつくれる、水溶液なんでスけど…効果は…」
まるで講義を行うように浪々と読み上げる。
「金や白金といった通常硫酸では溶けない金属すら溶かすという溶液なんでスけどね?」
支部長、もはや尚の言葉を聞いておらず、ガタガタと必死に体を揺らして必死に遠ざかっている…というより『遠ざかろうとしている』が正しいか。
しかし、悲しいほどに遅い。
「反応式は…」
つかつかと、部屋を歩きながら尚は続ける。
「HNO3 + 3HCl ⇒ NOCl(塩化ニトロシル) + Cl2(塩素) + 2H2O…」
一字一句間違いない。通常生活において役に立たない雑学に実に富んでいる。
高校一年で『王水』を正しく理解し、反応式はそうそう暗証できるものではない。
「…ま、今回はわたしもきちんと完遂できませんでしたので、シアン化合物(金はとりあえずこれにも解ける)にしておいて上げまス」
支部長の像の周りにぱらぱらとばら撒く。
「あ、あぁ、ああああ〜っ! 溶ける、溶けちゃうよぅ〜」
どろどろーっと、悲鳴をあげながら溶けていく金属像を見ながら、尚はため息をついた。
「元に戻ればちょっと火傷スるだけでスむのに」
「し、しかし……これが最後のOZとは思えない……いずれ必ず、第2,第3のOZが………」
「やっぱり王水もかけておこう」
 その言葉を聞いて気が変わったらしい。
 そう言い残して、金属像は、ぼしゅうぅぅぅぅぅっと溶けてなくなる
「さて。夜白さん先輩とデートっ」
くるりと踵を返して支部長室を出て行く。
きちんと窓を開け、換気も忘れなかった。この辺りが尚である。



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■エンディングフェイズ 【君の帰る場所】
 久川 慎一 場所:教室にて 時刻:事件解決の次の日・昼休み 登場:不可
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GM:さて、事件が終わった次の日。
色々と面倒事を片づけて、君は昼休みから学校に登校する事となりました。
慎一:「ふえー、重役出勤ー」ばたばた
GM:君が教室に入ると、クラスメイトの半分ほどは食堂に行くため席を立っています。
そして、教室に残っているクラスメイトの中に……彼が居ました。
紅人:「よっ、遅かったな慎一」


「えへー、お弁当持って来たよー」
にこぉっと笑みを浮かべて、お弁当の入った袋を掲げる。
「いつもすまないな……それじゃ、さっそく食べようか」
「うんっ。今日は天気もいいし中庭で食べたいなぁ」
早速手を引っ張って中庭に行く。
「おいおい、引っ張らなくても逃げないよ」
苦笑しつつ、二人して中庭へと歩き出した。
そうして、そこでお弁当を広げて仲良く食べ始める二人
「いい天気だねー。平和だねぇ」
のほほんと日向ぼっこしながら食事。
光景だけ見るとまるで恋人同士だ。…性別間違っているんじゃないだろうか…
「……ああ、平和だな……」
そういって、周囲の暖かな風景をゆっかりと見回す。UGNのチルドレンである真崎 紅人は慎一の大事な友達であり、そして同僚だ。
「こんな日が、いつまでも続いたらいいよね」
にこにこ。そういう擬音がぴったりとも言える笑みを浮かべて、お弁当のおにぎりを頬張る。
「いいや、“続ける”のさ。俺達の手で、な。……そうだろう、慎一?」
「うん、そうだね。これからも頑張ろうね、紅人」
暖かな日差しの下、二人は誓いを新たにするのだった……



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■エンディングフェイズ 【彼女のこれから】
 夜白 終 場所:“光姫の部屋”の前にて 時刻:事件から数日後 登場:可能
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光姫:「と、いうわけで!」
GM:心なしか、ぴかーっと輝いて見える真っ白なドアの前で、光姫は明るく笑う
光姫:「ここが、OZ様が用意してくださった私の部屋だそうです」


ここは、久路洲市にある高級マンションの一室
「ふむ、OZ殿も良くこのような場所を用意できたのう……」
今頃書類の山に埋もれてるだろうOZを思って笑う。
「なんでも、裏で色々手を回してあって、ここの所有権はUGNにあるのだそうですよ、兄様。本来は幹部用なのだそうでして、一室確保するのはそれなりに苦労したと仰っておりましたが」
ここの部屋の鍵を受け取ったときのOZの苦笑した顔を思い浮かべながら、光姫は報告する。
「左様か。まあ、細かい事は兎も角として……これからどうするのじゃ?」
このあたりは兄らしく心配する姿を見せる。
「はい。私は、私が護るべきこの世界を……日常を知りたいと願いました。だから、これを機会に一人暮らしを始めます。いつまでも兄様に頼ってばかりはいられませんから」
えっへん、と胸を張る光姫。
「うむ、それは良い事じゃの。では、頑張るのじゃぞ」
頭を撫でる。どうやら終(そして天凪のほうも)は頭を撫でるのが癖らしい。
「この街で暮らして……私は、私の知るべき事を、知ろうと思います」
頭を撫でられつつ、嬉しそうに、これからの抱負を語る。
「うむ、さて……私はそろそろ戻ろうかの。光姫の住まいも分かった事じゃし」
と言って、帰ろうと足を運ぶ。
「あ、兄様。もうお帰りなのですか? せめて部屋の中でお茶くらい」
と言いつつ、ドアノブを掴んで前に押し………
ズガン、とドアに額をぶつける。
「……大丈夫かの?」
一応、声掛けてみる。
「…………ひたひ……」
額を抑えながらしゃがみこむ。
ちなみに。
マンションのドアは、一般的に部屋の外側に向かって開くものであり、中側には普通開きません。
「ま、まあ、ともかくじゃ……気を付けて頑張るのじゃぞ」
言うだけ言って立ち去ろうとして、自分たちに向かってくる少女に気がついた。
「やしーろさんせーんぱい♪」
尚である。
「む、尚ではないか。どうしたのじゃ?」
「光姫ちゃんは?」
「そこじゃ…」
頭ぶつけて悶えてる光姫を指す。その指の先には確かに額を押さえてしゃがみこむ光姫がいた。
「………あ、尚さん……」
ぺたんとしゃがみ込み、額を抑えつつ涙目で尚を見る。
「あや…大丈夫でス?」
「大丈夫です……尚さんには、みっともないところばかりお見せしてしまいますね……」
と苦笑する。
「じゃ。いきましょうか?」
唐突に、にこっと笑って、ぐいっと腕つかんで光姫を立ち上がらせる。
「……ほえ?」
引っ張られて、意外そうな表情を浮かべる。
「デートでスよ? 言ったでしょ? 『デート一回で手を打つ』って」にぱ
「暫くすれば痛みも引くじゃろうて……っと、尚と出かける約束をしておったのか。気を付けての」
他人事のように二人を見送る。
「あれ? え? でぇと? 私と、尚さんが??」
光姫が混乱モードに突入した。世間知らずとはいえ『デート』の意味を理解しているようである。
「だって、今回は『夜白さん先輩』の問題じゃなくて、『光姫ちゃん』の問題だったんでスよ?」にー
「では、尚。後は任せたぞ」
完全に見送る態勢の夜白の横で、尚が言い聞かせるように光姫の顔をを覗き込む。
「んー…」
完全に見送り体制の夜白をじっと見る。
「む?」
意図がわからず、首をかしげる。
「え、えと、厳密には私だけでなく兄様も狙われていたから、わたくし達兄妹の問題というのが正確と申しましょうか何と言いましょうか……」
あたふたと、光姫が抗議の声を上げる。
「…ほむ。そうでスよね。じゃあ、二人とデートしましょうか」
納得したように尚がにっこりと微笑む。実のところ、夜白も誘いたかったようだ。
「なぬ? いや、ちょっと待て…今回は光姫の問題じゃったのではないのかの?」
こういう事に免疫が無い為におろおろとする夜白。
「さー! 行きましょう行きましょう。おいしいケーキ屋さんがあるんでスよう」
右に光姫ちゃん、左に夜白君をひっつかんでぐいぐい引っ張っていく。
「あ、あの、えと、その……こ、尚さん!?」
「あー、わかったから引っ張るでない」
諦めてついて行くことにする。こういうときの尚がどういうものなのか、夜白は知っているからだ。
「これからたくさんのことを知っていけばいいんでスよ。ケーキなんて食べたことないでしょ♪」
尚に引きずられ、街へと引っ張られていく黒と藍色の兄妹。
それが彼らにとっての、新しい日常の始まりだった――


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Double+Cross The 2nd Edition
 『原初の光(後編)』完
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