DOUBLE+CROSS THE 2nd EDITION リプレイ

『眠り姫は夢を見ない』


2007/02/03
ゲームマスター:だいち
プレイヤー:比良坂/久流/籠乃(敬称略)

キャラ紹介 オープニング ミドルフェイズ1 ミドルフェイズ2
ミドルフェイズ3 クライマックスフェイズ エンディングフェイズ 後話

■エンディングフェイズ■
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エンディングフェイズ 【『お互い』と『それぞれ』】
”時指す双剣”天道 勢太・裕太 場所:支部長室〜廊下 登場:不可
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「お疲れ様でした」
そういって、支部長代理の代理は君に頭を下げた。
結局のところ、『彼女』は利用されたのだ。
双子としての差があまりに激しかったが故に。
お互いが、それぞれを『半身』とした双子と、『他人』とした双子の差だ。
天 道
:「いえいえ。」
「…夢魔の涙はロスト。申し訳ない。」
浮かない顔で上の空な受け答えをする裕太の代わりに、今日は勢太が答えている。
御 剣
:「そうですね。彼女は結局助けることが出来なかったのは悲しいことですが。『ナイトメアシンドローム』に関しては徐々に回復する人間が出てきていました。数日を要する人もいるでしょうが…きっと大丈夫だと思います」
 「…何か、気がかりなことでも?」
天 道
:「そーすか。」
 「……これで、事態は収拾、ということで問題なければ。」
 「別になにも。…報告は以上でーす。」
 「……。」
御 剣
:「今回の件では、きっと事態は収束したとみていいでしょう。ただ、彼女がどうしてこのような行動にでたのかが不可解ですので、水面下で調査は行われるでしょうが」
天 道
:思い当たる節はある。が、今彼に話すべきことでもないだろう。恐らく。
 「じゃあ、俺たちはこれで。」
 「……失礼する。」ふらりと先に行ってしまう裕太に続いて、一礼してから勢太が出て行く。
御 剣
:「ゆっくり身体を休めてください。―――睡眠もね」投げかけられた言葉は優しい。
天 道
:そのまま扉を出て。
廊下に出た君たちはある人物に出会った。
目が合った途端、歩み寄ってきて頭を下げる。雪菜 姫花だ。
姫 花
:「ごめんなさい。それから……妹がお世話になりました」
天 道
:「あー…あんたか。」
 「…そちらは変わりないようだな。」
姫 花
:「うん。ちょっと、心に隙間があるみたいな感じはするけど。いつまでも一緒じゃないってわかってるから。だからお互い一人で出来ることをしようって言ってたのに。―――其れがこんなことになるなんて」
天 道
:「…まあ、もうちょいお互い考えるべきだったね。今更だけど。」
 「……救えなかったのが僕達であることは事実だ。すまなかったな。」視線で裕太をたしなめて、勢太が続ける。
姫 花
:「間違ってたのかな。どっちが正しいのかな。君たちみたいに寄り添っていた方が、ずっとよかったのかな」しゅんとして
天 道
:「そんなの」
 「…それぞれのやり方があって、それで良いのだろう。…何が正しいか、ではない。互いが心地よい距離を探すべきだったな。離れようと、共にあろうと。」
姫 花
:「あの子はいつもおどおどして、わたしの傍にいてた。ただ、数年前のある日。『お互いが一人で生きていけるように頑張ろう』って言い出したのは、あの子なのに…」
 「『自分たちは、同じじゃないのだから、いつかひとり立ちするのだから』って。……それなのに…」
天 道
:「……。」
 「一人で生きていきたかったけれど、幻影から逃れられなかった。…彼女はそうなってしまったのだろう。辛い時、側に誰かが必要なのは誰も変わらない。……の、だと思う。」むくれている裕太を気にしつつ。
姫 花
:「そだね。気がつかなかったわたしが悪いと思う。迷惑かけた。ごめんね」
天 道
:「……まあ、アンタもこれからがんばんなよ。」
 「…謝罪は無用だ。……それでは、な。」また先に歩き出す裕太を追って。勢太も別れを残し。
G M
:姫花は二人を見送る。ぺこ、と頭を下げて踵を返して歩きだした。
「………。」
機嫌を損ねたまま、裕太は廊下を歩き出す。
「…いい加減、機嫌を直せ。」 それを追うように勢太も廊下を歩きだす。
「……あのさ。」
「…どうした?」 急に足を止める裕太に倣って勢太も止まり。
「…悪い。暴走した。」
「………ああ。…大したことじゃない。」
ばつが悪そうな裕太に、一瞬思い当たらなかったのか間を取ってから、そんなことかと勢太が答える。
「相手のこと、考えてなかったの俺もだ。ホント…」
参ったな、と頭(こうべ)を垂れる。
「……お前は、お前で良いんだろう。裕太。」
ぽんぽん、とその頭を軽く叩いて勢太は慰める。
「……。」
「…自由にしろ。分かっても、分かつ前も。僕達は一つで二人だ。…変わらない。」
淡々と。
「……。…勢太は恥ずかしいことを真顔で言えるところが理解できない。」
「…何の話だ?」
すたすたと歩き出す。また。
「べつにー。」
「…なんだ、最近寝たふりでチェスを断っているから拗ねたのか。」
そんな会話をしながら。
自分たちも、いつか一人で生きていくかも知れなくても。今は。
これでいいと、そう思った。


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エンディングフェイズ 【眠り姫は目覚める】
”八房”三峰 楓太 場所:病室 登場:不可
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二度目の病室。
相変わらず慣れない匂いが充満してる。うんざりする。
用がなければ、あまり来たくはない場所だ。
楓 太
:それでも今日は、ちょっぴり違う。足取りは少し軽い。でも、気持ちは少し重い。
G M
:405号室。『彼女』辰上 皐月は聞くところによると病院食をおかわりする程度までに回復しているらしい。要は様子見で数日いるというわけだ
楓 太
:「えーっと…」 表札を確認。
G M
:問題ない。間違ってない。
楓 太
:ほっと、安堵。こんこん、ノック。 「失礼しまーすっ」
???
:「はーい」
G M
:中から女の子の声が返ってきた。聞き覚えのある、友人の声だ
楓 太
:返って来る声。それだけで、また、ほっとして。
ドアを開けて、「…皐月、起きたー?」 ひょこっと顔を覗かせる。
G M
:病院のベッドの上で、クッションを胸に抱きしめながら両手でハードカバーの本を開いていた。
皐 月
:「ふーた! うん起きたよ、起きた起きたー」
楓 太
:「わ、皐月だ皐月だ!」 妙にテンションの高い二人。
G M
:にぱ、と笑って返してきた。君が知る限りの友人の姿
本から手を離して、両手で楓太の手を掴み…FULLハンドシェイク
楓 太
:「うゅゆゅゅゅゅっ」 あわあわあわ。
 「げ、げんきそー、だねっ?」
皐 月
:「元気だよー? だって寝てただけだし。点滴ずーっと打ってたせいかしらないけどさ。すっごくお腹空いてねー」
 「病院食、少なくってさー」ぶーっと膨れる。
楓 太
:そっか、と頷き。
 「でも、勝手にお菓子とか食べたらいけないから、だめだよー」
皐 月
:「そなんだよねー。もーお腹空いちゃってさー」
楓 太
:「…寝ている間、どーだった?」 ふと。少し、妙な質問を。
皐 月
:「夢を、見てたよ」いきなり、元気な口調からいってん、ぽつりとつぶやく
 「広い広い、森の奥でね。湖の上に浮かぶみたいにお城があって。そこにお姫様が独りで住んでるの」
楓 太
:「うん。…独りぼっちで?」
それで、と。御伽噺を聞く子供のように、続きを促す。その表情は、真剣なものだったけれど。
皐 月
:「うん。でも寂しそうじゃなかったんだ」
楓 太
:「寂しそうじゃ、なかった?」 きょとん。
皐 月
:「なんかとっても……うん。とってもね。安らいだ、って言うか。とっても満たされた顔をしてた」
「お姫様がわたしを見てね。『還りなさい』って言ったの。『貴女はここにいてはいけない人だから、還りなさい』って……そして目を開けたら、病室だったの」
楓 太
:「…………不思議な、夢だね」
皐 月
:「目が覚めたら無性に悲しくてさ。わんわん泣いちゃった」てへ、と舌を出す
 「ねー。ふーたは? わたしが寝てる間にさ、何か面白いこと、あった?」くりくりと覗き込む
楓 太
:「…ボク? んーっと…皐月が寝ちゃってて、寂しかった」 えへへ、とちょっと眉を寄せ。
皐 月
:「それだけ?」
楓 太
:「ん。いっぱい、あったよ」 ふい、と窓の外へ視線を向ける。
皐 月
:「どんなこと、どんなこと!?」昔話をねだる子供のように目を輝かせて身体を乗り出す
楓 太
:「んーっと…」 難しい顔。
 「誰かの代わりになりたい女の子の、哀しいお話」
G M
:皐月はきょとんとしてとまる。
皐 月
:「悲しいお話か…じゃあ、いいや」ふい、と興味なさげに座りなおした
楓 太
:へにゃり。表情を崩す。 「面白い話、出来なくて、ごめんね」
皐 月
:「ううん。明日退院だし。退院したらまた遊ぼう!」
楓 太
:「うん。遊んで、笑って。楽しい事いっぱい、しよう!」
にぱっと笑う。
皐 月
:「約束ー」
皐月が指切りをするように小指を差し出した
楓 太
:楓太も同じ様に、指を差し出す。
 「うん、約束。」
もしかしたら、こんなことだって、夢の中では簡単に叶うのかもしれない。
けれど、今、こうして、現実にあるから。これはきっと、嬉しいのだと思う。
だから。 差し出された指と、自分の指とを絡めて。
楓 太
:「ゆーびきーりげーんまんっ」
皐 月
:「うそついたらはりせんぼんのーますっ」
楽しげに指きりをする。其れが日常だ。ちょっと悲しいこともあったけど、其れを覆い隠すくらい、楽しいことをすればいい。楽しいことで満たせばいい。其れが出来る力を持っているのだから。


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エンディングフェイズ 【王と君主】
”牙狼の王”久継 駆穂 場所:自室 登場:不可
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彼女が眠りについてから、3日目が過ぎようとしていた。
静かに眠る彼女はさながら『眠り姫』のようだ。普段、誰にともなく撒き散らす笑顔や声はその眠りの中に深く深く沈んでいる。いまだ目覚める気配はない。
携帯電話が鳴った。着信音を鳴らし、明滅して震える。
駆 穂
:「────」
取り合えず電話を取る。
久 世
:「こんばんは、”牙狼の王”」その声はあの張り付いた笑みの主だった
駆 穂
:「ああ。君か」
久 世
:「そこにいる子、目覚めた?」
駆 穂
:「いいや」
久 世
:「いやー。そっかそっかー。数日の個人差あるもんねえ。目覚めると良いね? 目覚めなかったらどうしよう?」
まるで道化のようにおどけた声が耳に届く。からかっているのだ。
駆 穂
:「どうしようかな」
さらりと潜り込んだ悪意の刃を交わす。
久 世
:「意外に困ってない声だな。困ってないんだろ」
駆 穂
:「ああ」
久 世
:「心配じゃないの? それとも、そういう『感情』を壊しちゃったかい?」
駆 穂
:「心配、ね」
 「生憎。三峯もそうだが。真殿もそうだ」
久 世
:「いやはや。そうか『信じている』のか。いやはや。変わったね君は」
駆 穂
:「友人として戦友として。僕が生死を兎角述べるには彼らは強い」
久 世
:「いやはや。たいそう嫌われたものだ。”犬は犬らしく首輪に繋がれておけば良い物”なのにね?」呆れるようなため息をついている、これすら道化の行動だった。
駆 穂
:「牙狼の王は──必要ならば無慈悲に排除する」
久 世
:「あんまり過去や引き継いだ名にしがみ付いてると、脚を取られて『持って』行かれるよ?」
駆 穂
:「それは君の方だな」
 「元より。僕は世界の影の如く」
 「事が終われば消えるだけさ」
久 世
:「おやおや、寂しいことを言いなさる。君を必要とする───そう人間性(ヒューマニティ)の為に君を必要とする人間がいるというのに」
駆 穂
:「だから牙狼の王だ」
ばっさり言い捨てる。
久 世
:「王ではない。”久継 駆穂”としてだよ。私が言っているのは」
駆 穂
:「さっさと話を進めたらどうだい」
 「君が一言話す度にぼろぼろと夢の欠片が崩れているのが判るよ」
久 世
:「君に住まう『彼女』からの伝言だ」声が一気に引き締まった。
駆 穂
:「ああ」
久 世
:「『大切になさい。その繋がりは尊く、君を支えるのだから』───それじゃ」一方的に電話が切れた。
駆 穂
:「────」
G M
:最後のその一言はなぜか優しい口調だった。
「ったく。あの馬鹿は」
頭を掻く。
以前からそうだった。あの”魔女”は──
自分以上に自分を『信用』していた。それは良い様に。善い様に。──いい様に。
死んで欠片となって”ここ”にいても。
かわらない者らしい。──だからか。
G M
:視界の端で何かが動いた。
翡翠色の目を擦りながら、ゆっくりと身体を起こし、ぼんやりとした表情で周囲を見渡す、年齢からしては小柄な体躯が―――そして君と目が合って凍りつく。
駆 穂
:「────」頭をかきつつ動いた物を見る。
G M
:暫らくして、視線を自分が寝ている布団と君とを何度も往復して……慌てて立ち上がる。立ち上がって―――急に動いたために貧血を起こしてべしゃ、と頭から床に落ちた。
駆 穂
:「珈琲でもどうだい」
やれやれ、と。
肩を竦めた。
壬 緋
:「ごごごっ…! ごめんなさいっ!! ベッド…ベッド占領しててっ」ペタンと座り込んで
 「ごめんねごめんねごめんねっ。ベッド、ベッド借りっ放しでその……あれから何日たってるの!? もしかしてずっと寝てた!? 駆穂君、何処で寝てたのーー!!?」マシンガントークの上、半分悲鳴だ。ベッドから転がり落ちて身体を起こすがぺたんと座り込んだまま半泣きで駆穂を見る。―――いや。泣いていた。
G M
:ぼろぼろと涙をこぼして。
壬 緋
:「……れ…あれ?」ぐしぐしと目を擦るが、涙は止まらない。
駆 穂
:「────」
 「ふぅ」
 「もう少し休むといい」
壬 緋
:「ご、ごめん、ごめんなさいっ! う…なんでかなぁ…とまんない……」目をこすって必死に耐える。暫らくして本格的に泣きに入った。
 「えっと、…うっく…べ、べつに、その……駆穂君が悪いから…泣いてるわけじゃ…うっく…なくて…ひっく」
駆 穂
:「────」泣いている様を見て。壁にもたれて座る。
壬 緋
:はぼろぼろ泣きながら駆穂を見上げて、
駆 穂
:「少しだけ昔話をしよう」
壬 緋
:「…っく……うん」必死で頷いた。
「僕の育った施設は王様とそれ以外の雑兵を生成する”王国”だった
 雑兵は王になる為に。仲間も。友人も。親族も
 全てを踏み台にして生きる事を強制された
 だから。こそ。いつもそこの王国は屍と瓦礫の山だった
 生きているものは酷く寂しかった。何時死ぬかわからないから。かなしかった。だからこそ──
上を見た。前を見た。──泣かない様に
 何時しか残った王の候補は。一つの誓いを立てた
 こんな王国は壊そうと。みんな悲しい時に悲しいといえるようになろう、と
 ──そうして残った皆は刃を取った
 そして現在に至る。昔話は終りさ」
 ふぅと。一息。
「だからこうして誰かが泣いていると。空を見る。それが屋根で見えなくても」
壬 緋
:「…痛い?」いつの間にかしゃくりあげる声が収まっていた。だが、涙はずっと流れたままだ
駆 穂
:「いつか。その人がそんな痛みも乗り越えられるように。己が刃を取ろうと」
「だから。君は悲しい時は泣けばいい。それがココロだというモノなんだから」
ただゆっくりと告げて。一息吐く。
壬 緋
:「ねえ」
駆 穂
:「ああ」
壬 緋
:「駆穂君は? ボクはいいんだ。悲しかったら泣くし、嬉しかったら笑う。―――でも駆穂君は?」
駆 穂
:「生きているうちに考えるさ」
壬 緋
:「またそういうこと言うー」ぷーっと顔を膨らませる
駆 穂
:「生憎子供なんでね」
壬 緋
:「そういうときだけごまかすんだから」間を置いて。ぐう、とお腹がなった。
壬 緋は真っ赤になってお腹を押さえ込んで上目遣いで駆穂を見る。
駆 穂
:「──其れが生きている証拠さ」
壬 緋
:「あれから何日…?」恐る恐る聞く
駆 穂
:「3日」
G M
:真っ赤になって床に突っ伏した。
壬 緋
:「―――一週間食べてない…」
 「ごめん…ちょっとその恥ずかしいところ見せた……わ、忘れてくれると、いい、かなあ?」
駆 穂
:「注文や質問が多いね」
なかばおどけた様に言いつつ。
何か用意するよ、と言って。窓を開ける。
涼やかな夜風を入れて。──月を見て。
G M
:ぺたんと座り込んだまま。窓から吹き込む風に髪を躍らせて。
駆 穂
:「──」
壬 緋
:「綺麗だね。月。金色。駆穂君の色だ」
駆 穂
:「──それはどうも。眠り姫」
とんとん、と歩いて。ドアを開ける。
自分は生きている。だからこそ継いで。これからも傷をおっていく。
忌み名も血も己の糧として。──歩いていこう。
夜の道。風の道。焔の道。──人の道。
遠い遠い未来の理想郷を目指して。歩いていこう。王として。人生という名のただ一人の旅人として。
こうして久継 駆穂は悪夢を踏破した。



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Double+Cross The 2nd Edition
 『眠り姫は夢を見ない』 END
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